GW の余韻も冷めやらぬまま仕事をしております。久しぶりの長距離走行による心地よい疲労感や達成感を感じているうちに週末が来ましたが、仕事の関係で土曜日は出勤。じゃあ日曜には久しぶりに Tiger を野に放ちますかと思っていると、天気予報がそれを阻んでいます。久しぶりに走りたいのに走れない、これは神様が与えたもうたじらしプレイというやつでしょうか。天気予報よ、外れろ!
では前回の続き、5 月 5 日のレポ-トです。
外の明るさで目が覚めた。やばい、寝過ごしたと思い時計を見ると、5:23 。西日本とは日の出の時間が違うことを実感した。日本は小さいとよく言われるが、そうでもないなあ。
軽くストレッチをして 7:00 出発。今日も暑くなるとラジオで言っている。車で遠出をする時にはラジオで地元FM を聴くことにしている。なかなか楽しいし、ご当地情報を知ることで立ち寄りポイントを増やすこともあるので、なかなか便利。
今日は毎年恒例の巡回をする。前日は幹線道路を通過したのみだったので、今日は被災した所がどう変わったかをじっくりと見ていこう。K57 を東進し、K19、K112、R399、K36 と走り継ぐ。今年は早咲きだったため桜は見られなかったが、そのぶん新緑を楽しむことができた。日本の原風景のような山村をつなぐ穏やかなワインディングと相まって、うっとりするようなシチュエーションだ。
ギアは 3 速か 4 速、上り坂やコーナリング時にはアクセルを踏むが、あとはほぼパーシャルでつーっと流して走る。後続車がいないので、気ままにゆっくりとドライブ。こんな極上の道にはめったにお目にかかれない。
ただ今回は、暖かくなったせいか路面に多数の障害物が。それはヘビと毛虫。あちこちで道路を横断しているので、踏まないように気をつかう。せっかく助かった命だ、無事に大きくなれよ。
富岡に着き市街地を回ってみる。新しい住宅がたくさん増え、放置された建物は激減した。結果として、地方都市の郊外のような普通の風景になっている。表面的なことだけであっても、この「普通さ」が日常性を取り戻すきっかけになっていくのだろう。それでもこうなるためには 10 年以上の時間がかかったという深刻さを忘れてはいけない。
それなら警戒区域指定がはずれて 1 年が経つ夜ノ森はどうなっているだろう?昨年の 5 月には全く人の気配を感じなかったが。駅の東口付近は相変わらずゴーストタウンの様相だ。建物は荒れたまま放置されており、駅舎の新しさとは対照的だ。西口には新しい建物ができており、こちらは時間を取り戻そうとしているようだ。この違いはなんだろう?
写真を撮るためホームで待っていると地元民らしいお客が1人いた。列車が入って来ても、その人は乗降ドアの前で棒立ち。この区間はボタンを押してドアを開けることになっている。苦笑いをしながらこちらを見て、「久しぶりだから忘れてたわ」と言ってボタンを押し、乗り込んでいった。11 年という時間の長さを見せつけられた気がした。
10 時を過ぎた。混まないうちに行っとくか。R6 を北上して南相馬へ。目的地はとんかつ大甕。朝食を摂っていないので、ブランチか。他にほとんど客もいないのでゆっくり食べられる。さて何を食うか?
ほっきめしを食べるつもりだったが、とんかつにも心惹かれる。食券機の前でしばし悩む。
はっ!
ダメモトで聞いてみた。
ワタシ:持ち帰り、できますか?
店 員:できますよ。
Praise the lord!
ひれカツ定食をいただくことにし、ほっきめしは持ち帰りにして夕食にしよう。
運ばれて来た定食はボリュームたっぷり。ご飯と味噌汁はお代わりできますよといわれたが、今回は自重しよう。ジーンズのウエストもキツくなってるし。
とんかつもこの店の売りなのでマズイわけもなく、肉も柔らかくて美味しく頂けた。
食事に満足したので再出発するが、双葉町の中心部を見るのを忘れていたことに気付き、R6 を南下し双葉町に入る。他の地域より警戒解除が遅かったためか、それからの市街地の復興のスピードは驚くべき速さだ。賑わいと元気を感じることができたが、R6 の東側はまだ時間がかかりそうだ。
そして再び北上。R115 に出て K74 で太平洋側に出て南下。福島に来始めて数年間使ったルートだ。当時は通行止めばかりで、海に出る道はこれしかなかった。久しぶりに走ったが、景色は変わり人が増えていた。震災の 5 年後、ここの水田に水が張られている風景に力をもらったことを覚えている。
海沿いは年々工事が進み、道路は内陸に敷かれ、防潮堤からは遠く離れてしまった。なので沿岸部を走っているという意識は薄い。この景色が普通に感じられる頃には復興が一段落していればいいな。
小高地区の菜の花迷路に行く。今年は花が少ないようだ。もう咲き終わっていたのかな?ここは道端から見るだけで充分だ。以前ここで忘れられない景色を見てしまったので、元気にはしゃぐ子供や笑顔で見守る親の姿を見られただけで満足できる。
最後に寄ったのは浪江町。3 月に一部が警戒指定地域から外れたためか、これまでより人の姿が多く見られた。農業も再開した様子。ここも日常を取り戻し始めたな。
今年も数箇所で街の復活を感じることができた。他人事ではあるが嬉しくなる。では戻るとしよう。帰りは最近全線が通行可能となった R288 と R399 を使おう。
しかし少し走ると現実を突き付けられた。ここは大熊町。常磐道以西はまだ手がつけられておらず、荒れた所や立ち入り禁止区域がたくさんある。
他の地域が「復興の光が見えた」状態なら、大熊町は「復興の2文字が薄ぼんやりと見えかけた」というレベルに過ぎない。楽観的に考えていたことを猛省した。
でも道に罪があるわけではない。ここも「見て楽しい、走って嬉しい」という山道だ。バイクで来なかったことが残念だと思わせるほどの良道だった。この道を走ろうとしたがバイクだったので警備員に追い返された経験があるだけに、前から来るバイクを見るたびに
来年はバイク、来年はバイク、来年はバイク
と詠唱して心を鎮めた。
ホテルに戻る前にもう一ヶ所、お宝ショップへ行ってみる。GW ということもあり大混雑。この店は品数が多いので期待して行ったのだが、値付けが高い。なので収穫は小さい物一つとガチャガチャが一つだけ。しかしどちらも地元では見たことがない物だったので、満足感は高い。
ホテルに戻り、夕食のほっきめしを頂く。冷めてはいるが、要は炊き込みご飯なので味が落ち着いていてうまい。来年からこの方法でいこう。
あとはテレビを見て、だらだら。
本日の走行距離:331.3km
本日の振り返り
毎年来ていますが、復興は着実に進んでいます。楽観的に考えるのは禁物ですが、悲観的過ぎるのも考えものです。少しずつでも日常が戻り、そこから生まれる活力がさらに復興を進めていくというのが自然な形でしょう。
少し気になるのは、住んでいる人たちの気持ちの復興とハード面での復興の間には、スピードや程度の差が広がっているんじゃないかと思ってしまう場面に出くわすことが増えたことです。
力技で復興を進めるというやり方から、今後は街や人の今後の在り方の目標を定め、それに応じた浸透型の復興に変えていくやり方にシフトする必要があると思います。そのためには予算の使い道の選択と集中が必要であることは言うまでもありませんが、利権が絡む、横やりが入る、不公平感が起こる、怪しい世論誘導が行われるなどの問題に対処するのは大変だろうというのが素人でも想像できます。
大きな災害が起こってから 10 年余り経ちますが、今後はさらに民度や政治力が試されることでしょう。大丈夫、ニッポン?
次回は 5 月 6 日のお話です。
では。